公開日: 2023/04/27
更新日: 2023/05/08
自工会二輪車委員会は3月14日、報道関係者を対象に「第5回二輪車委員会メディアミーティング」を開催した。今回はプレゼンターとして、二輪車企画部会・安全教育分科会の飯田剛分科会長(ホンダ地域事業企画部主任)を迎え、バイクの安全啓発の取り組みについて意見交換を行った。
冒頭、日髙委員長より警察庁から交通事故死者数の発表内容について説明がなされた。統計資料によると、2022年の交通事故死者数は2610人となり、前年から26人減少した。原付、自動二輪の死者数は435人で前年から28人の減少となった。細かく見ると、原付は39人減少しているが、自動二輪は11名増加している。こうした状況について触れたうえで、「前々回のメディアミーティングでは、バイク販売が好調である旨の説明がなされたが、バイク人口の増加に比例して、交通事故死者数が増えてしまうのは本望ではない。自工会では2030年までに二輪車の死亡事故死者数について、2020年比で50%減を目指している。二輪車委員会の交通安全啓発活動について説明したい」と状況を明らかにした。
説明資料「⾃⼯会が推進する『⼆輪⾞安全啓発活動』の取組み」について、いくつかポイントを列記する。まずはプロテクターの認知度調査について。調査の結果、胸部プロテクターの認知率は75%で二輪ユーザーでも存在を知らないという人が一定数いるということが判明した。認知経路については教習所、二輪販売店、WEB、SNSなど。これは年齢層によって様々であり、若年層は教習所での認知が圧倒的に多く、男性60代以上、女性50代以上は、雑誌からという人も一定数存在している。
認知率75%に対して保有率は、現バイクユーザーの18%にとどまっており2割に満たない。だが、約5割の人は、必要性は感じると回答。これらの層に、いかに保有してもらうかがポイントとなる。一方、所有者の9割が様々なシーンで着用していることが確認できた。まずは所有を促すことが急務だ。
実際の着用率についても分析しているイタルダ(ITARDA=交通事故総合分析センター)の事故のデータの中に、2017年からプロテクターの着用状況が追加されている。死亡、重傷、軽傷、無傷まで合わせた4年間の合計の着用率をグラフ化しているが、全排気量の平均は9.3%弱。排気量別に見てみると、大きさに比例して着用率が上昇している。排気量の小さいオートバイに乗るライダーへの着用推進がポイントだろう。
ヘルメットの離脱率削減に向けた取り組みついても言及した。イタルダと自動車工業会二輪車事故分析分科会で毎年、二輪車事故の特徴分析による事故死傷者低減研究を実施しているが、この報告書によると、1995年から25年間にわたり、二輪車死亡事故の3割前後にヘルメットの離脱(2021年:28.5%、2022年:26.4%)が見られることが判明した。なかでも小排気量バイクほど離脱率が上昇している。年齢層別で見ると若干、若年層が高いが、全年齢で離脱が発生している。
続いて、今後の二輪業界を支える大きな存在となる高校生に向けた安全運転教育について見てみよう。まずは三ない運動について。強硬な取り組みで知られた埼玉県において2019年、三ない運動が撤廃され、バイクに乗る高校生に安全運転教育を授ける体制が整った。この事例を全国で展開すべく2020年度に運用マニュアルを作成。2020年度から22年度にかけて三重県、静岡県、愛知県、山梨県などで検討委員会や意見交換会などを実施した。今後の目標としては、2030年度までに全国のバイクに乗る高校生に安全運転教育を行う方針だ。
参考までに、埼玉県における免許の取得状況と通学許可生徒数の推移に関するデータを見てみると、2022年7月末時点での埼玉県における免許取得者数は679名。通学許可生徒数は154名と、昨年度よりも大きく増加しているのが分かる。こうした数字を踏まえ、二輪車事故発生状況を見ると、2019年度の三ない運動の見直し以降、重大事故を起こしている生徒は講習の未受講者がほとんど。つまり、講習には一定の成果があると認められたわけであるため、参加者数を増やすことが非常に重要だと考えているという。2023年度については、年6回の開催から2開催増やし8回とする計画だという。
ざっとミーティングの概要について説明したが、続いて参加メディアとのディスカッションおよび質疑応答内容について紹介する。
二輪車委員会―――二輪車死亡事故の約30%にヘルメット離脱があるという結果がある。長きにわたり啓発活動を展開してきたが25年間、ヘルメットの離脱率に変化がなく限界を感じている。皆さんのご意見をいただきたい。
メディア―――30%という数字が結構衝撃的だ。これほどだとは誰も思っていないと思うので、この数字をキチンと伝えることが重要。
二輪車委員会―――二輪車の安全教育の領域では、この数字は判明していたもの。啓蒙活動を何十年にもわたり実施してきたが、変化はない。つまり、さらに踏み込んだ手立てを考えないと、改善できないと認識している。
メディア―――都内では、あごひもを締めずにバイクに乗っている人が多い。この問題はヘルメットメーカーや用品連合会に話をすべきだと思う。道路交通法を改正する働きかけも行うべき。現状は「ヘルメットをかぶらずに運転してはならない」となっているので、あごひもを締めるか締めないかはやり方の問題であり違反の問題ではない。取り締まりへの依存は良くないが、20年も変わらないのであれば、法改正を働きかけるべきではないか。
二輪車委員会―――今の道路交通法では、あごひもを締結してなくても取り締まりはなく、またあごひもがあれば、二輪用ヘルメットでなくても判別がつかないため、取り締まりが行われていないのが実態だ。今後、警察庁と25年間、ヘルメットが脱落している現状について協議を進めていく。
二輪車委員会―――二輪業界では、自工会もメーカーもそれぞれが安全教育活動を行っているが、参加者はリピーターが多い。ユーザーの安全意識を高め、講習を受けることの必要性を認識してもらうためには、何が必要か。
メディア―――免許更新の時、違反歴のある人は、2時間講習を受けるが、二輪免許保有者には、動画視聴をしてもらうのも一つの方法ではないか。
二輪車委員会―――免許更新時の講習については、法律で定められているところもあるため、勝手に流したりはできない。警察庁との連携などについては現在、考えているところだ。
メディア―――特定小型原付に関する改正道交法が7月1日に施行される。ヘルメット着用の有無が極めて大きな話題になっている。これをキッカケに、免許が必要な二輪車も含め、総括的な検討の場を持ってほしい。
二輪車委員会―――そうした議論については、自工会活動として何ができるのか、議論を進めていく。
メディア―――三ない運動の見直しについて2020年、2021年、2022年に意見交換会を実施し2030年までに撤廃、とのことだが、三ない運動が継続実施している自治体はどれくらいあり、どういう進展があったのか。
二輪車委員会―――非常にハードルは高い。埼玉県の場合、理解者がいても撤廃までに3年掛かっている。全国では47都道府県のうち半数(2016年現在)が、何かしらの免許取得制限を行っていることが判明した。三重県や山梨県、静岡県などと意見交換を行ったが、三重県については、実際に学校単位で今も免許を制限している高校もあった。地理的な問題で乗っている生徒もいるが、安全教育を行っていないのが現状。県の教習所協会が安全教育活動を担うことになっている。山梨県や静岡県については、意見交換会は実施したが、そこどまり。隠れて乗っている生徒をどのように把握し安全教育を届けるか、という対応は今後の課題。2030年までの撤廃は、相当ハードルが高いが、目標として掲げながら進めていく。
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