公開日: 2024/02/15
更新日: 2024/09/04
25年前までは、新車販売店として稼働していたスエザキ。ある時期を境に中古車販売へとスイッチした。比率は90%が中古。販売スタイルまで変わった。当時、市場に与えたインパクトは大きく高い注目を集めた。その後、様々な壁に突き当たるが、それを乗り越える術は、先代の隆氏からの薫陶であり、それこそが末崎社長にとってのバイブルであった。
二輪販売店は、店の規模や立地といった特性に合わせ、ラインアップやサービス内容などを決定するのが一般的。接客力なども重要な要素だが、その根底にあるのは、すべて人。技術も人。こうしたところまで完全に真似ることは不可能。見た目は似た感じになったとしても、中身を真似ることはできない。だから売れないのだろう。
「結局、独自のカラーが必要なのですが、それを考えると、目標とする販売店を設定すること自体、あまり意味をなさないように思うのです。他県の店を目標にしたとしても、商圏が異なれば意味がない。結局は商圏の被る他店と比べた時、どっちが強いか、そこだと思います。もし、目標店舗を設定したとすると、何かちょっと行き詰まると、その店はどうやっているのだろう、とそこの情報ばかりを調べ、自分を見失ってしまうでしょう。それならば、ウチの基盤を作ったのは父なので、父の考えやアドバイスを信用すべきなのです。そのうえで、そこに私の考えをプラスし戦略を構築する。これが私の基本的な考えです」
福岡では屈指の規模を誇るスエザキだが、この地位に対する意識は全くない。なぜならば、全国を見据えないと意味がないと考えているからだ。
現在における新車・中古車の販売比率は9対1で中古車である。だが、この比率となったのは、いまから25年ほど前のこと。それまでは100%新車だけを扱う店であったというが、その年を境に一気に切り替え、中古車販売店へとラインアップを変更した。スエザキの名前が広がったのは、この時だという。
当時の仕入れは、オークション日ごとに数十台のバイクをゴッソリとセリ落とすというやり方。多い時で40台、少ない時でも最低5~6台は買っていた。もちろんこれは、スエザキ1店分の台数だ。当時は「すごい店がある」と話題になったという。
内訳は250ccを中心に原付、大型と幅広く落としていった。しかも、何週か続けて終わりというわけではなく、これが毎週続くのだ。当時の月販台数は100台を軽く超えていた。こうした活況を受け、スエザキではあるサービスを始めた。「全国送料1万円」というものだ。このサービスは、いまでは実施している販売店もあるが、当時は全国どこを見渡してもなかったという。隣接県であっても、北海道であってもすべて1万円。これは話題にならないはずはなかった。このサービスによって、同店の名前はさらに広く知れ渡るようになった。
さらに拍車がかかったのは、同店で力を入れているサービスの一つである通販の存在だ。対象は全国だが、驚かされるのは、その比率。同店の月販台数は約40台。需要期には60台ほど売れることもあるが、それに占める通販の割合は、平均で20%、多い時では30%になるという。ちょっと驚きの数字である。内訳は原付が50%で250ccクラスが30%、残りが400cc以上となる。
では、地域需要と通販需要とでは、どんな違いがあるのだろうか。まずは前者について聞くと、ちょっと面白い結果が得られていることが分かった。
「これは10代、20代の若い子に多いのですが、おじいさんやおばあさんと一緒に来店します。いわゆるスポンサーです。こっちはそういうお客さんが多いんです。これには見た目がキレイであること、という基準があり、それを満たした車両であれば、納得が得られ、成約となる率が一気に高まります。中古の場合『こげんキズが入っとるのにこげんお金を出すんやったら』と新車を要望されるんです。支払いはほぼキャッシュ。多く売れるのは原付ですが、Ninjaなど軽二輪も少なくはありません。これに対し、通販で購入される他の都道府県のお客さんは、ほぼローンを組みます。写真を何点も送信できるので、車両を見ないと買えない、という人は、どんどん減ってきていますね」
レスポンスの良さを感じるのは関東と関西のユーザー。説明を聞いて、「ちょっと検討します」と回答する人は極端に少なく、即決することが多い。すでに色々と調べたうえで、買うつもりで連絡をしてきているのだ。都心部との文化の違いが買い物の仕方にも表れているのではないか、と末崎社長は指摘する。
「こっちのお客さんは、比較的堅実で資金力が高い。日常的にあまりお金を使わないけど、でも、欲しいモノには一点集中でお金を使います。例えば、都心の人は平気で1枚1万円のTシャツを普通に買います。でもこっちの人は、ユニクロで十分でしょ、と考える。この差なんです。価値観が全く違うんですよ」
こうした状況下。末崎社長が数年前から積極的に行っていることがある。新車の原付販売だ。筑後市の一部の高校生は原付一種での登校が認められている。けれども原付一種の販売台数は減少しており、2023年はついに10万台を割り込んだ。地域の特性として原付一種は欠かせないが、中古の台数は減少の一途だ。そこで、いまからできるだけ多く新車を販売しておけば、学生が不要になった時、買取り需要が期待できる、というわけだ。
「3年後にできるだけ高く買い取るけん、絶対に持ってきてね、と必ずお願いしています。その効果は少しずつ表れていますね」
コロナが5類に移行してから今年の5月で1年が経過する。ここ筑後市でも、地域特性の面からも様々な変化があったものと思われるが、これについてはどうか。売上と利益率の視点から聞いた。
「コロナ禍で売り上げは上がりました。でも、利益率はあまり変わってないですね。結局、仕入れが高くなり、オイルも配送もすべて上がった。だから、忙しくなっていっぱい売れたね、と言っても、蓋を開けて見たら、変わらない。ただ、新しいお客さんは確実に増えました」
販売にあたって苦労したのは、女性ユーザーへの対応だという。堅実で経済観念が発達した人が多いが、バイクの購入にあたっては、最初から中古は選択肢に入れず、買うなら新車、という固定観念を持つ人が少なくないからだと指摘する。
「レブルがいい例なのですが、どの女性のお客さんも新車を欲しがるのです。でも、以前は全くと言っていいほど入荷の目途が立たなかったじゃないですか。だから中古車を勧めるわけですが、これがひと苦労でしたね。まずイメージしてもらうところから始めました。『1年半以上入ってくることのないバイクの入荷を待つのと、目の前にある程度の良い中古車にすぐ乗るのとでは、どっちがいいですか。新車ではないけど走行距離も少ないですしね。数日後、このバイクに自分が乗っている姿を想像してみて下さい』といった感じで話をします。こういうお客さんは大概、ディーラーに予約を入れています。それでも早く乗りたいから、色々な店に聞いているわけですが、結果、どこでもほぼ同じことを言われる。それもあり、中古車の購入を決断してくれるのです」
では、コロナ禍でバイクを購入したユーザーは現在もバイクライフを楽しんでいるのだろうか。コロナ禍という時期限定で見ると、バイクを手放さないまでも、あまり乗らなくなったユーザーが増えているという。結局、楽しさを感じられるほど乗っていないユーザーが多いのだ。そうしたユーザーに、バイクの楽しさを知ってもらうため、ツーリングに誘っても、コロナ禍での経験から、複数名で行くツーリングに慣れておらず、参加しないのだという。
「群れることに抵抗を感じるのです。何度もツーリングに参加しているお客さんと一緒に行くことを嫌う。それまでは一人かせいぜい2人だったので、マスツーリングに慣れてない。これが現実です」
コロナはユーザーの行動をも変えてしまったのだ。
冒頭、スエザキは広大な敷地を有することに触れたが、現在、この敷地を有効活用し、24時間入退室が可能な「ガレージレンタルサービス」を展開している。よくあるコンテナではなく、プレハブ造りで全20部屋を備える。スペースはAタイプが幅1370mm×奥行4070mm×高さ2400mmで、Bタイプは1740mm×奥行4070mm×高さ2400mm。月額利用料はそれぞれ7500円、8500円と格安だ。
常に満室状態が続いており、空き待ちも常時数名はいる。多い時で8名いたこともあるという。洗車スペースも設けており、セキュリティも完備。
利用者は高額車に乗るユーザーが多いというが、このサービスを利用することによる相乗効果も大きい。利用者からはメンテナンスの依頼もあり、さらには代替え需要も見込めるからだ。
セキュリティのしっかりとしたサービスであることが、店に対する安心感にもつながる。プラス効果しかないのだ。
この先、さらに伸ばしていきたいサービスや新たに取り組む展開について聞くと、レンタルバイク、との回答が返ってきた。現在、同店では既にレンタルサービスを展開しているが、排気量は50~125ccの原付に限定されている。これを拡充し、幅広い需要に対応しようというものだ。
「ニューモデルに乗ってみたい、という声が増えてきているんです。ここから八女までいくと、古い町並みなどが楽しめる観光スポットがある。そういった案内をすることで、遠方からのお客さんにも訴求できるかな、と。いまはまだ4台しかないのですが、まずはこれを10台まで増やす計画です。レンタルバイクは修理等で車両を預かった時の代車としても活用できるので、デメリットはないんです」
年間販売台数にして、500台近く販売するスエザキだが、まだまだ進化発展の余地はある、そう考えているのが感じ取れる。
経営者であれば、誰しもがいくつもの壁に突き当たる。それを乗り越える術は人によって様々だろうが、末崎社長にとってのそれは、先代からの薫陶であることは間違いない。
「あの時、父はこう考えた」「大多数の人が同意見でも、それを全く意に介することなく自分の信念に基づき行動した」
壁にぶつかったら、原点に立ち返る。原点とは先代の思考そのもの。ここから回答を導き出している。要諦は、どう動くことが店にとっての利益になるのか、だろう。時にはさりげないアドバイスを受け、また時には直接的な行動により指南を受けることも。これらの積み重ねが、末崎社長をさらに大きく成長させる。ある意味、同氏にとってのバイブルは先代であり、理念そのものなのだ。
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