公開日: 2024/05/29
更新日: 2024/06/12
買う理由は「カタチがカッコいいから」でもいい。不調を感じたら、自分で直したり、専門店以外の店に頼まないで欲しい。旧車に楽しく乗ってもらいたいので、この2つのポイントは必ず伝えています。
コロナ禍の影響により、一時期、旧車の販売価格はコロナ前の倍以上に跳ね上がった。現在は全体的には落ち着きつつあるものの、世界的な需要増もあり、コロナ前の相場には戻ってはいない。
中古車は車両のコンディションや人気度、希少性などにより相場は決まる。だが、以前は200万円で買えていたものが400万円になっていれば、ユーザーは「何が違うのだろう?」と思うだろう。また、価格に対する期待感が変わることも予想される。
「新品同様だと思っている方が増えました」
こう話すのは旧車専門店のオーナー。旧車は欠品パーツが多く、現行モデルとは違い、メンテナンスや修理などでも中古パーツや社外品に頼ることが多々あるのが普通だが、最近はこうした状況を知らないユーザーが増えたという。旧車に対する捉え方自体が変わってきているのだ。
以前は、Z1を求めて来店するユーザーは、自分でいろいろ調べたり、乗っている先輩に話を聞くなどして、ある程度の予備知識を得てから購入していた。けれども今は、「カッコいいから」というその思いだけが購入理由。欲しいと思うバイクに関する知識がないまま購入するユーザーは少なくないのだ。また、納車時に色々と説明をしても、ほとんど聞いていない人もいるのが現状だという。
ちょっと驚きだが、その結果、「ガソリンキャップが開けられない」とか、燃料コックの切り替えで燃料が供給されてエンジンがかかるのにやり方が分からず「エンジンが止まった」と連絡してくるケースも増えているという。エンジンが止まってしまうと慌ててしまう人も多く、燃料コックの確認を促しても「バイクがおかしいから、引き上げに来て欲しい」と言われることもある。
「エンジンが止まると焦ってしまうのは分かります。そのような時は、『順を追って確認しましょう。それでダメなら引き上げにうかがいます』と安心させたうえで、改めて燃料コックなどの確認をしてもらいます」
相手を落ち着かせる対応をとることで、電話だけで解決できることも増えるという。
同店には近隣のユーザーだけではなく、遠方からの来店も多い。そうした遠方からのユーザーに対し特に強調して伝えていることがある。
「少しでも不調を感じたら、自分で直そうとしたり旧車を専門としていない店に依頼せず、まずはウチに連絡して欲しい、そうお願いしています」
理由は、どこどこのボルトを外すにはコツがあるとか、〇〇の症状が出たら早めの対処が必要など、旧車を直すのには独特の知識や経験が必要となる場合がある。それを知らずに直そうとすると、より大きなトラブルになってしまうことがあるからだ。
例を挙げると、「ユーザー自身がカムチェーンガイドを調整したバイクのドレンボルトを外したら、ガイドの欠片がドレン穴から出てきた」「ピストンリングを交換したというバイクのピストンを見たら合口隙間が一列に並んでいた」や、ほかにも、専門店ではない店に修理を依頼したところ、「クランクケースのボルトが折れたので補修したが、ボルトがまっすぐに入らない」とか様々な問題が起きている。時には、バルブスプリングがバラバラになっていたとか、専門店ですらも予想しないトラブルが発生していることもあるのだ。
最初から相談してくれれば問題が小さくて済んだはず。これが現状なのだという。
この店では他店が販売した車両の修理も受け付けているので、修理やメンテの予定が5月時点で7月までいっぱいだったが、同店では商談の際、ユーザーにかならず次のことを伝えているという。
「買う理由は『カタチがカッコいいから』でもいいと思うのです。でも、買いたいバイクの知識を蓄えて欲しいということがひとつ。それと、先ほども言いましたが、不調を感じたら、自分で直したり、専門店以外の店に頼まないで欲しいということ。旧車に楽しく乗ってもらいたいので、この2つのポイントは必ず伝えています」
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